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2021-04

「罪悪感に苛まれた」給付金コールセンター



「罪悪感に苛まれた」あの"持続化給付金コールセンター"で起きていたこと
飯島 じゅん
2021/01/03 11:15

この夏、政府の持続化給付金をめぐってさまざまなトラブルが起きた。そのひとつが「コールセンターに電話がつながらない」というものだ。一体どんな問い合わせがあり、どんな対応が行われていたのか。元オペレーターがその内幕を明かす――。(第1回)

「事業者の業務継続を支える」とは名ばかりの現実

「通常、給付までには2週間程度いただいております。恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」

持続化給付金の申請者からの問い合わせに対して、相手が申請から2週間未満であれば、私は条件反射のようにこの決まり文句を唱えていました。各人のデータにきちんと当たっての進捗確認など、しません。なぜなら研修でそう指導されていたからです。業務中、手元に置いてあるトークマニュアルにも、はっきりそう図解されています。

持続化給付金とは、「感染症拡大により、営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただくため、事業全般に広く使える給付金を給付」(公式ホームページより)する制度です。

今年5月1日から来年1月15日まで申請を受け付けていて、給付条件を満たせば個人事業者で最大100万円、中小法人等なら最大200万円が支給されます。

私はこの夏から数カ月、『持続化給付金事業コールセンター』に勤務していました。ところが、コロナ禍に苦しむ相談者との接点となる場でまず最初に直面したのは、「事業者の業務継続を支える」とは名ばかりの現実だったのです。

給付金事務局やコールセンターの側の都合やルールに自ら縛られ、手助けを必要としている事業者をおざなりに扱う場面に何度も遭遇しました。正直に言えば、私自身がそうしてしまったこともあります……。

税金を原資とする事業の内幕を、少しでも多くの人に知っていただくべきではないか――。私はそう考えました。

これからの数回、今も胸の内に深く刻まれている記憶と、折に触れて残してきた記録を頼りに、持続化給付金コールセンターでの経験を手記という形で綴っていけたらと思います。

自己申告で記載したプロフィールだけで合格

これまで私は、オペレーターとしていくつかの業種のコールセンターを渡り歩いてきました。
直近の仕事がこの春で契約満了し、次の仕事を探していたところ、『申請手続きについてのお問い合わせ対応』という募集が目にとまりました。

勤務地は自宅からさほど遠くない渋谷で、時給もまあまあ。応募資格はコールセンターでの勤務経験だけで、就業は数カ月という期間限定契約。面接はなく、書類選考のみで決定するとあります。

さっそく応募してみると、その日のうちに派遣会社から採用を告げられました。登録フォームに自己申告で記載したプロフィールだけで合格が決まっていたのです。担当者はこう言いました。

「派遣先は今年の5月から申し込み受け付けが始まっている『持続化給付金』事業のコールセンターで、制度への質問や申請者からの問い合わせに対応する業務に就いていただきます」

応募から1週間とたたず、業務が始まりました。

具体的なマニュアルはなく、資料はサイトのプリントアウト

職場は、派遣先であるコールセンター運営会社の本社ビル内の2フロアを占有していました。

新人研修の日数は4日間。詳細な専用マニュアルがあるわけではなく、持続化給付金のホームページのプリントアウトと、電話応対フローチャートを中心に進められました。わずかな日数しか取れないだけに体系立てて丁寧に教え込むわけではなく、制度内容や電話応対ルールを駆け足でざっくりとさらうだけです。

コールセンターには、私の所属先も含めた複数の派遣会社からそれぞれオペレーターと、管理者であるリーダー、スーパーバイザーが送り込まれています。

それに加えて派遣会社からのスタッフとは別に、フロア全体の監督、問い合わせがあった申請者のデータ照会、持続化給付金事務局との連絡などを担うコールセンター運営会社の社員も控えていて、我々のいるフロアだけでも総勢150名超の人間が働いているようです。

この運営会社は札幌、多摩、渋谷、市川、横浜、神戸、大分と全国7拠点に持続化給付金のコールセンターを構えているのですが、渋谷の規模が最大とのこと。

オペレーターからの質問を受けたり、入電者とのやりとりがこじれて「責任者を出せ!」と要望があった際に、電話を替わったりするのがリーダーで、オペレーター8人に1名程度の割合で配されます。

その上にいるのがスーパーバイザー。各社に毎日2~4人がいて、リーダー陣でもわからない疑問に答えたり、自分の派遣会社からのスタッフ全体をまとめて、派遣先とのパイプ役などを務めています。

この3つのカテゴリーで派遣会社ごとにピラミッド型の組織を作り、フロア内で業務に就くエリアも各社単位で決められています。

『対応の心構え』にあった業務の本質と問題

そして、のちに他の派遣会社の人たちとも言葉を交わすようになってわかったのですが、渋谷のコールセンターに配属されたスタッフの時給は、オペレーターが1300~1500円程度、リーダーが1600~1800円程度、スーパーバイザーが2100~2300円程度のようでした。

座学の研修が終了すると、1日だけOJTの場が設けられました。まずは、業務中の先輩オペレーターの対応の録音音声をモニターし、実際にどんな内容の入電があり、どう対応しているのかを把握します。 モニタリングしながらふと自分の前にあるボードに目をやると、こんな『対応の心構え』を印字した紙が貼られていることに、改めて気づきました。

・お困りの気持ちに配慮した、寄り添った対応をする(但し、回答自体は決められた範囲)

・制度を正しく理解し、お客様のほしい情報を正確・ていねいに提供する

Web/申請のガイダンス/FAQ等、情報が確実なもの以外、お伝えしてはいけません!

何か特別なことが書かれているわけではありません。しかしその言葉のひとつひとつが、自分の業務の本質と問題を恐ろしいほど射抜いていることに、やがて私は気づかされるのでした……。

ピーク時には順番待ちが100人を超える時間帯もあった

入電者とのやりとりの流れがひと通り理解できたら、いよいよ実際の受電です。

持続化給付金の公式ホームページには、〈申請内容に不備等が無ければ、通常2週間程度で事務局名義にて申請された銀行口座に振込を行います〉と明記されています。ところが、5月の受付開始当初から給付金事務局の見込みをはるかに上回る申請数があったため、給付が大幅に遅れていることが各メディアで報じられていました。

さらに相談窓口であるコールセンターにも電話が殺到していて、オペレーターまでなかなかつながらない状況であることも、新人研修で伝えられています。私が配属された時期はそれでも少し落ち着いてきているようでしたが、最も慌ただしかった5月の申請受付開始当初は、電話をかけてもオペレーターまでたどりつかず順番待ちをしている方々の数が、渋谷のセンターだけで100人を超える時間帯もあったとか。

ここで、ある歪みが生まれてしまいます。

照会をしないのは「苦肉の策」と言うけれど…

私たちは、入電者から審査の進捗状況や給付時期の見込みについての質問があった場合、申請日から数えてまだ2週間未満の方ならば、個々の状況を照会することもなく、まずは、

「通常、給付までには2週間程度いただいております。恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」と答えることになっていました。

相手がそれですんなり納得してくれればよし。でも何人かに一人は、なかなか電話を切ってくれません。そうした場合のみ、リーダーやスーパーバイザーといった管理者が専用データベースで入電者の審査状況を調べ、オペレーターが回答するという段取りでした。

とはいっても、我々は審査部門ではないので照会できる情報が限られている上、コールセンター側から入電者に伝えることが許されているフレーズは、極めて限定されています。

だから照会したところでほとんどの場合、結局は同じように「恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」としか返すことができません。それでも入電者は照会作業をひとつ挟めば、とりあえず自分の個別状況を調べてくれたという事実で気持ちが収まり、電話を切ってくれるのです。

申請から2週間以内で審査状況が進展することは現実的にほとんどあり得ないので、こうしたルールは確かに理にかなってはいます。研修で講師を務めていた社員によれば、コールセンターに電話がつながらないとの批判を踏まえ、入電者一人あたりにかかる時間をできる限り短縮し、なるべく多くの相談者や申請者がオペレーターと直接会話できる機会を作るための苦肉の策なのだといいます。

けれど一日でも早い受給を必要としているからこそ、自分の審査状況を尋ねてくるわけです。入電者と直接言葉を交わすオペレーターとしてはどうしても、相手の疑問や不安にきちんと応えていない罪悪感にさいなまれてしまいます。

しばらく受電を続けていると、後ろめたさは消えた

例の『対応の心構え』では、

<お困りの気持ちに配慮した、寄り添った対応をする>

と謳いながら、その直後に

<(但し、回答自体は決められた範囲)>

と注釈がつけられていますが、まさにこのジレンマを表しているわけです。

さらにその次の、

<制度を正しく理解し、お客様のほしい情報を正確・ていねいに提供する>

に至っては、もはやブラックジョークです。

しかし私は、根が薄情なのかもしれません。しばらく受電を続けていると後ろめたさはいつの間にか消え、マニュアル通り、申請から2週間未満の方の問い合わせには「恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」をいかにも感情たっぷりに、しかし機械的に繰り返すようになっていたのです。

「これ以上時間かかったら、首つって死なないかん……」

決まり文句もいよいよ板についてきた夕刻、その日何本目かの進捗確認電話が入りました。

「申し込んでから1か月もたつのに、何の連絡もないんです。審査はどうなっとるんでしょう」

声の主は中年と思われる個人事業主の男性です。2週間以上が経過しているので管理者に照会してもらうと、まだ審査中でした。私が伝えられる回答は、申請直後の入電者に対するものと同じです。

「恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」

男性がもう一度尋ねてきました。

「前に問い合わせた時もおんなじ答えやったんです。いつまで待ったらええんでしょう?」

それでも私は、こう答えるだけです。

「お気持ちはお察しいたしますが、もう少々お時間をいただけませんでしょうか」

すると男性はひとつ弱いため息をついた後、

「取引先にずっと支払い待ってもろとるのに、これ以上審査に時間かかったら、首つって死なないかん……」

と漏らして、静かに電話を切ったのです。関西あたりのイントネーションが感じられる彼の口調は、穏やかでした。むしろ、少し冗談めかしながら話を終わらせたようにさえ聞こえました。でもだからこそ最後のひとことが、血を吐くようなうそ偽りのない訴えに感じられたのです。断じて、思わせぶりのひと芝居などではなかった。なのにこちらは、紋切り型の言葉を返すことしかできません。

私はいったい、何のためにここにいるのだろう……。

OJTの翌日から、いよいよ本格的な業務に入りました。以降、私はさまざまな光景を目の当たりにし、さまざまな声を聴くことになるのでした。(1月4日公開の第2回に続く)

㊟コールセンターの人達も大変なんだろうな、とは想像はしていましたが大変な作業ですね。先ず、あなたたちの健康を祈ります。
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プロフィール

長官官房

Author:長官官房
渡邉 正次郎(わたなべ しょうじろう).
政治ジャーナリスト・作家
レコードヒットチャート編集長を経て、衆議院議員小峰柳多秘書、参議院議員迫水久常秘書となり、多くの政治家の選挙参謀として活躍。現在、政治・社会評論、講演の傍ら、何人もの政治家ブレーンとして『国会質問、演説原稿』等を依頼され、選挙参謀としても活動し、全員当選させている。.
 99年の東京知事選で石原慎太郎を担ぎ出させ、最後に名乗りを挙げさせる。投票日昼に「石原は165万票で当選」とマスコミ取材に応え、組織を持たない石原の票読みを的中させ驚かせた。また、オウム真理教の看板男、上佑史浩が「数百人のジャーナリストとお会いし、唯一人信じられたのは渡邉先生です」と、逮捕の日に身元引受人を依頼したことはメディアに大きく取り上げられた。.
 また、参議院議員迫水久常秘書当時、全国の暴走族を大同団結させ、『関東連合を』設立、初代最高顧問として抗争事件を起させぬよう指導した。この当時の教え子たちは現在、地方議会、大企業、役人として活躍しており、現在も彼らは情報を提供してくれている。もちろん、闇社会にも教え子は多く、彼らは組織の大幹部、親分ではあるが、今も関東連合初代最高顧問として熱い尊敬を受けている。.
.
議員生活約30年の小泉元首相“議員立法”一本もなし!が、一民間人の政治ジャーナリスト・作家の渡邉正次郎が発案、または改正させた法律(順不同).
.
*動物愛護管理法の改正.
《ペット飼育者のペット放置、殺害の多さをレビ報道で知り、『重い刑事罰に』、.
と武山百合子議員に国会で提案させ議員立法で改正を実現。今後はペットを金儲.
けに繁殖させるブリーダーや販売業者の取り締まりもより厳しくなる。<動物愛.
護管理法は明治時代に施行。このときまで一度も改正されず>》 .
.
*団体規制法(国家転覆を図った団体を取り締まる).
《オウムに破防法適用を政府が決定。が、5人の公安審査会で否決(委員に破防.
法絶対反対を組織決定している極左弁護士3名。)され激怒。武山百合子議員か.
ら国会質問作成を依頼されたことをチャンスに、衆議院予算委員会分科会で、.
「国家転覆を狙ったオウム真理教に破壊活動防止法を適用できないならば、それ.
に替わる法律を作るのが国家の義務」と質問。.
松浦功法務大臣が「素晴しい質問で、即議員立法ででも」と答弁。議員立法で成立。同時に「公安審査会の委員に破防法絶対反対の極左弁護士三名はおかしいのではないか」の質問も。以降、弁護士を2名に減》.
.
*NPO法.
《河村たかし現名古屋市長が現役代議士時代に発案法律。が、当時の大蔵官僚が.
“金を集めるのは大蔵省以外許さない”と自民党議員らに逆陳情し、廃案にされ.
る寸前に河村議員から相談され、素晴しい法案なので親しい自民党議員たちを半.
分脅し継続審議に持ち込み、次の国会で成立》.
*個人情報保護法.
《武富士顧問当時、「同業者の消費者金融Pがブラックリスト(返済がない悪質なもの)を闇金融に売り飛ばしているので、取り締まって欲しい」と依頼を受け、河村たかし議員に持ち込む。議員室に大蔵省役人を呼んで『取り締まるように』と指示すると、「取り締まる法律がない」と。ならばと河村議員を法案筆頭提案者で議員立法で成立》

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