第一生命が全額弁済して当然
第一生命が全額弁済して当然
第一生命の元女性社員19億円詐取、会社が巻き込まれた「厄介な立場」
ダイヤモンドオンライン戸田一法
2020/11/16 06:00
第一生命保険は9日、山口県周南市で勤務していた元社員の女性(89)が在職中、顧客から約19億円をだまし取ったとして県警に告発していた問題で、金融庁に経緯などを盛り込んだ経過報告書を提出した。
同社ホームページにも「元社員による金銭の不正な取得について」として調査結果を公表。管理体制の不備を認め「被害にあわれた方をはじめ、お客さまならびに関係者の皆さまに、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを改めて深くお詫び申しあげます」と謝罪したが、元社員の動機や使途など詳細は明らかにしていない。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
特別調査役、政財界に広い人脈
第一生命の調査によると、元社員は山口県周南市の西日本マーケット統括部(徳山分室)に勤務していた2002~20年、顧客24人から計19億5100万円をだまし取ったとされる。
元社員は顧客に対し「成績優秀者のみに認められた高い利子がつく自分専用の特別枠がある。特別枠に空きがあるので、自分に預けないか」などと架空の金融取引を持ち掛けていた。
だまし取ったのは顧客の手元資金(現預金)のほか、契約者貸付金、死亡保険金、満期保険金、解約返還金など。第一生命は詐取された一部を被害者に立て替え払いしたと説明している。
全国紙社会部デスクによると、元社員は同社トップクラスの営業成績で、約4万4000人いる営業社員のうち、たった1人の「特別調査役」という肩書で定年退職した後も同社に残り、今年7月まで勤務していた。
地元の政財界に人脈が広く、16年には各界の名士が出席して勤続50年を祝うパーティーも開催されたという。
同社は17年に元社員の不審な行動について外部から情報提供があり調査したが、元社員や顧客が事実関係を否定したため、問題を見抜けず調査を終了していた。結果として、被害はその後も続いてしまった。
今年6月、顧客から情報提供があり、7月に問題が発覚。山口県警は8月、同社からの告発を受理し、詐欺容疑で捜査している。
社会通念上、顧客への弁済は不可避
それでは、詐取された現金は取り返すことが可能なのだろうか。
第一生命は「個別の事情に応じて、被害金の一部」を弁済したとしているが、一部が幾らなのかは明らかにしていない。また「今後、全額を弁済する」というような方針も示していない。
この問題を巡っては、元社員に現金を詐取されたとして顧客2人が、寄託金の返還と損害賠償を求める民事訴訟を山口地裁周南支部に起こしている。
訴えによると、1人は、元社員から母親の死亡保険金について「トップセールスマンの特別枠があり、高利で預かることができる」と持ち掛けられ、昨年3月に利息を年500万円として5000万円を預けたが、利息が支払われないとして返還を求めている。
もう1人は今年3月、元社員から「得意先1人だけに高利をつけられる。あなたを推薦したい」などと誘われ、支店長らが同席して借用証書を作成。1000万円を元社員名義の口座に入金したとして、同社と元社員に賠償を求めている。
訴訟になったということは、元社員には返済する資金はなく、手元はスッカラカンと見て間違いないだろう。
では、被害者は泣き寝入りかというと、社会通念上「会社としてあずかり知らぬ個人の犯罪」で済ますのは無理があるのではないだろうか。
前述の通り、第一生命には一度は調査に着手していながら問題を見抜けなかったという瑕疵(かし)があるし、調査後も被害が続いていたという事実は強く非難されるべきで、責任も重いと言える。
また、報告書では原因について「管理・教育体制と不適行為についての予兆把握・モニタリング体制について不足があった」と責任を認めているのだから、やはり弁済するのが筋だろう。
ただし、株主からも説明を求められるのは必至で、元社員に対しても懲戒免職処分にしたとは言え、刑事的責任を追及しなければならないのは当然のことだ。
被害金弁済の名目をどうするか
第一生命は元社員を告発したが、メディアでよく言われる「告発」と「告訴」は刑事訴訟法上、意味が違うことは御存じだろうか。
平たく言えば、告訴は被害の「当事者」、告発は直接の被害者ではない犯罪事実を認知した「他人」が捜査機関に訴えることだ。
告訴は刑事訴訟法上、告訴権者が捜査機関に犯罪の事実を申告し、訴追を求める意思表示のことだ。 告訴権者とは直接の被害者、または被害者の法定代理人を指す。
法定代理人とは、被害者が未成年の場合の親権者や成年後見人で、被害者が殺害された場合は配偶者や親族、兄弟や姉妹も告訴権者になることが可能だ。
告発とは、告訴権者と犯人以外の人が、捜査機関に犯罪の事実を申告し、訴追を求める意思表示をすることだ。つまり、告発は事件と無関係な人でもできる。
もちろん、誰が行ってもいい権利ではあるが「○○が気に入らない」などの理由でありもしない事実をでっち上げて告発することはご法度だし、捜査当局も受理するか否かはもちろん精査する。
事実と異なる容疑で「告訴しました」などと記者会見でもしようものなら、逆に名誉棄損罪で訴えられるので、乱用することは慎まなければいけない。
何が言いたいかと言うと、第一生命は今回の問題で直接の被害者ではなく、告訴権者は現金を詐取された顧客ということだ。
第一生命にとってネックになりそうなのが、実はここにある。着服など直接の被害者であれば刑事告訴した上で、回収できるかどうか別として民事訴訟を起こせば株主には「刑事・民事両面で可能な措置は取った」と一応の言い訳はできる。
経理的にも「損金」として処理し、回収が不可能と確定した場合、貸倒損失として算入できるので、税務処理上わずかでも傷は小さくできる。
しかし、今回の問題では社会への体面を保つため顧客に被害金を弁済するとして、決して少なくない金額をどういう名目で捻出するかだ。
本来ならば顧客に告訴してもらい、会社側の雇用責任を問う形で損害賠償を求めて民事訴訟を起こしてもらうのが法的には分かりやすいが、第一生命としても株主へのポーズとしてすべて認諾というわけにいかず、応訴せざるを得ないだろう。そうすれば企業としてのイメージは悪くなる一方だ。
顧客にとっても訴訟費用は安くないし、手間暇もかかるので負担は大きい。また、89歳の高齢女性に刑事罰を科すことはそれほどの意味を持たないし、望みは弁済してもらうことだけだろう。
第一生命は「今後、警察による捜査も含めた事実解明を踏まえて、被害にあわれた方への対応について検討してまいります」としているが、勤続50年超のトップセールスレディのせいで、非常に厄介な問題を抱えてしまった。
㊟これは女には刑罰と弁済の責任を負わせ、第一生命も重い責任がある。女に弁済能力がないから第一生命が弁済し、第一生命が女に賠償請求と刑事告訴したらいい。生命保険会社はどこも儲かっている。弁済などへのカッパ。ですよね。オリックスの宮内義彦さん。
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