五輪開催は危険 中止を
五輪追加費用がコロナ対策でさらに膨張、簡素化でむしろコスト増も?
ダイヤモンド編集部,岡田 悟
2020/06/12 06:00
1年後に延期されたが、海外のコロナの終息が見通せず中止の可能性も高まる東京五輪。コロナ対策を求められることで、さらにコストが膨らみそうだ Photo:Bloomberg/gettyimages
延期によるコスト増加分の抑制に加え、新型コロナウイルスへの対策まで求められるようになった東京オリンピック・パラリンピック。中止の可能性も高まる不安定な状態は、組織委や行政の現場に歪みを生み出している。コロナの終息もままならない中、“スポーツの祭典”に酔いしれる余裕はあるのだろうか。膨らんだコストを負担するのもまた、私たちなのである。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
設計や仕様の変更が生むコスト
警備計画や動線の見直しも必至
新型コロナウイルスの感染拡大によって開催が来年7月に延期された東京オリンピック・パラリンピック。延期に伴い3000億円程度の追加費用がかかると試算されているが、国際オリンピック委員会(IOC)は、そのうち約700億円しか負担しないと早々に予防線を張った。つまり、残りの経費は日本が、主に開催都市である東京都が被ることになるだろう。
財政的な問題や、コロナの感染防止策を採るため、政府や東京都の幹部たちは6月4日、来夏開催の東京五輪について、開閉会式などのセレモニーを中心に簡素化を検討していると明らかにした。
同日の東京株式市場では、五輪関連で多額の収益を上げるとみられていた電通グループの株価が前日比4%下落。コロナの給付金問題に揺れる同社には“泣き面に蜂”となったが、懊悩しているのはもちろん、電通だけではない。
「施設を簡素化しろと言われても、仕様や設計を変更してやり直せば、余計にコストがかかるというジレンマがある」と、ある五輪組織委員会関係者は打ち明ける。
五輪の延期や中止によって発生しうるコストの内容や、組織委内部で懸念されていた問題について、本編集部は3月13日に公開した記事「五輪中止・延期でスポンサー料3480億円はどうなる?組織委内部の議論を暴露」で詳報している。
五輪の延期は3月24日に正式に決まったが、南米など海外では今なお新型コロナの感染拡大が続く一方、ワクチンや特効薬が開発される見通しはまだ立っていない。
安倍晋三首相は5月28日、国連のコロナ関連会合に寄せたビデオメッセージで、「人類が打ち勝った証として来年の東京五輪を完全な形で開催する決意だ」と発言した。しかし、都や組織委は簡素化に向けて動き始めている。
セレモニーや施設の簡素化に加え、小池百合子東京都知事が6月5日の定例記者会見で「密にしてはだめです」と語ったように、コロナの感染防止対策も必須となる。だがこれとて決して容易ではない。
例えば、東京湾岸の有明にある展示施設「東京ビッグサイト」では、東展示棟と東新展示棟を国際放送センター(IBC)、西展示棟と会議棟をメインプレスセンター(MPC)として組織委が借り上げる。
IBCは発電機などを備えた巨大で複雑な装置を要するもので、一連の設備はすでにそのまま据え置かれている。
一方でMPCの工事は、中止が決まらない限り来年に始まる予定だが、従来通りの計画のまま工事を進めていいのかどうか、まだ結論が出ていない。
総工費を減らすために設計をやり直すにしても、新たに設計するだけで多額のコストを要する。加えて、重要な施設であるため警察などと協議して警備の計画を作り上げているが、施設の仕様や設計が変われば、これらも変更を求められる可能性がある。
また工事に使うパーテーションのような壁材などは購入済みのものもあり、設計や仕様の変更に応じて発注し直すことになれば、コストが余計に発生する可能性があるという。
そこへ加わるのがコロナの感染予防対策だ。
三密回避のためにも設備を見直し
論点をすり替える小池都知事
組織委関係者によると、国内外の主要メディア関係者が集うMPCは、記事を書くペン記者の座席が600、カメラマンの座席が200用意される計画だ。だが、ソーシャルディスタンスを実現するためには、同じ広さの空間で席数を半分から3分の1に抑えなければならない。
またMPCの記者会見場の席数も700~1000を想定しているが、大幅な削減が必要になる。「設備を縮小し仕様を落とすだけでもコストがかかる可能性がある。コロナ対策でコストがさらに増すうえに、本来のキャパシティを賄えない」(前出の組織委関係者)となるわけだ。
同様の問題は、国立競技場や日本武道館などすべての競技会場や関連施設で起こりうる。各競技会場に設けられる記者席や記者会見スペースなどはMPCよりももっと狭い。加えて、選手の控室である「ドレッシングルーム」は、着替えを行うなどいわゆる“三密状態”となりやすい典型的な場所だ。
また観客にも、入場時の検温や手指の消毒を求めることになれば、施設の動線計画に狂いが生じる。これが施設の設計や仕様に影響する可能性もある。
もしも、コロナ対策に万全を期すためにこうした施設の仕様や設計を改めるとすれば、増加する手間やコストは決して小さくはない。
その一方で、三密回避のために観客数を絞れば、チケットの販売枚数は減ってしまい、組織委の収入が減る。開催延期とコロナ対策は、組織委にとってデメリットしか生み出さない。冒頭で触れたように、IOCは追加コストの負担について既に予防線を張っているため、超過したコストは開催都市である東京都が負担を強いられる可能性が高い。
小池知事は7月5日投開票の都知事選での再選は固いとされながらも、ここにきてエジプト・カイロ大学“首席卒業”という従来の売り文句に重大な疑義が呈せられるなど冴えない。都知事選では五輪の経費負担をめぐる議論も大きな争点となるはずだ。
にもかかわらず小池知事は、6月5日の定例記者会見で一連の簡素化やコストの問題について尋ねられたのに対し、「(7月に予定されている)五輪1年前のイベントのあり方が問題だ」と語るなど、論点をすり替えてやり過ごした。
職員の4割が自治体出向の組織委員会
コロナで業務パンクする現場の悲鳴
「出向者を戻してもらえないか」――。組織委の職員約3800人のうち実に約1500人が、都や区市町村など自治体からの出向者で占められており、組織委には出向元からこうした切実な声が寄せられているという。
いうまでもなく自治体の現場は今、コロナ対策の一環である給付金の申請書類の審査や支払いといった業務に忙殺されている。3~4月にコロナの感染者が増えていた時期には、保健所の業務がパンクしていたことも記憶に新しい。
1年延期した五輪の準備が本格化するであろう今秋以降は、コロナ感染の第2波が起きる可能性が取りざたされている。数週間の“スポーツの祭典”よりもはるかに緊急性の高い業務が生じる恐れは大きい。
未曽有の感染症リスクが今なお続いている中で、夢に酔っているだけでいいのかどうか。多くの都民や国民は、すでに気付いているはずだ。
㊟東京五輪開催は無理です。経費が莫大に膨らむことより、海外から参加をためらう国も出て来る。縮小してもそれなりの人員が集まる。必ず密になり、必ず感染者が出る。ゴキ醜はこれぞとばかりに、「疫病発生源は日本だ!」とやり出しますね。
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