破たん本格化は夏か
破たん本格化は夏か コロナ「大倒産・失業」時代が来る
AERA.COM 2020/05/28 09:00
「新型コロナウイルスで“とどめ”を刺されたようなものです」
千葉県船橋市の老舗旅館「割烹旅館玉川」の小川了支配人は、ため息を漏らす。5月19日、4月末で営業をとりやめたことを明らかにした。
創業は1921(大正10)年。まもなく100年の歴史を重ねようとしていた矢先だった。76(昭和51)年の火災で建物の一部は焼けてしまったものの、昭和初期に建てられた木造の建物も残っており、国の有形文化財に登録されている。作家の太宰治が35年に20日余り滞在した部屋もあり、それを目当てに訪れる宿泊客や外国人も少なくなかった。
「昨年秋に台風が2度直撃し、もともと古かった建物の傷みは余計にひどくなり、修繕や管理にかかる費用が膨らみました。東京五輪の延期を受けて予約客のキャンセルが集中し、もう全面的に補修するのは難しいと判断し、旅館をたたむことにしました」(小川さん)
コロナの感染拡大は経済や産業に大きな打撃を与えている。営業休止や時短営業の要請で、事業活動が制限されるとともに、外出の自粛で消費者が街に出なくなった。訪日外国人客(インバウンド)も激減。企業や店の売り上げは減少し、経営に行き詰まるところが増えている。
東京商工リサーチによると、新型コロナ関連で倒産を含めて経営破たんに追い込まれた企業は5月22日時点で172件に達した(うち倒産は113件)。宿泊・ホテル関連のほか、飲食業やアパレル関連など、インバウンド需要や個人消費に支えられていた業種が目立つ。音楽教室の運営会社や配食サービス、学校給食向けの食材販売会社などもある。1860年創業の醤油メーカー「とら醤油」(岡山県)など、古くから地域経済を支えてきた企業も少なくない。
東京・上野にある森鴎外ゆかりの旅館「水月ホテル鴎外荘」も、5月末に約80年の歴史に幕を閉じる。女将の中村みさ子さんは「コロナをきっかけに、あくまで自主的に閉館の道を選んだ」と明かす。
「今年は、例年なら花見で書き入れどきであるはずの3月に、宿泊や会食のキャンセルが相次ぎ、売り上げは例年に比べ9割減りました。一方で、人件費や光熱費などの支出は毎月4500万円ほどあります。当館には森鴎外が『舞姫』を執筆した旧邸が残っていますが、このまま先の見えない状況が続けば、いずれ守っていくことができなくなると思い、余裕のあるうちに閉館することにしたのです」
政府は5月14日、特定警戒の8都道府県以外の39県を、21日には大阪、兵庫、京都の3府県をそれぞれ緊急事態宣言の対象から外した。残る東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道も25日に解除され、47都道府県すべてで「自粛モード」が解かれた。
しかし経済への影響は、これから深刻になりそうだ。東京商工リサーチ情報部長の原田三寛さんは、倒産ペースが上がると予想する。
「今までに倒産した企業は、昨年10月の消費増税の影響などを受けて、もともと経営の厳しかったところが少なくありません。必ずしも、コロナばかりが原因ではない。しかし、これからは借り入れや財産を切り売りすることで負債が膨らんだり資本が傷んだりした『バランスシート劣化型』の倒産が中心になっていく。
例えば、中小企業には内部留保が厚いところはあまりなく、経営環境の変化への対応が難しい会社もあります。業種も、消費や観光関連から、自動車産業の3次、4次下請けなどに広がっていく可能性がある」
東京商工リサーチの集計では、2月こそ2件だったが3月23件、4月84件と月を追うごとに増えている。5月は22日時点で63件にのぼり、3ケタ台になりそうな勢いだ。
エコノミストで経済評論家の斎藤満さんも、「時間が経つほど資金繰りに行き詰まる会社は増える」と懸念する。
「財務省の法人企業統計によると、現預金や株式、債券など企業の手元資金を、毎月の売り上げで割った『手元流動性比率』の平均は1.9カ月(金融・保険業を除く)。手持ちのお金が年商に対して約2カ月分しかないという意味。
わかりやすく言えば、何の問題のない会社でも、2カ月間売り上げがない状況が続くと干上がってしまう。緊急事態宣言後、2~3カ月経った夏ごろに破たんが本格化する可能性があります」
休業していても、人件費や家賃、光熱費などの固定費を払い続ける必要がある。収入が見込めなくなるなか、会社を維持するだけでも大変だ。
休業の要請が解除され、営業を再開しても、国が唱える「新しい生活様式」のもとで客のニーズが変わり、営業スタイルや戦略を見直す必要が出てくるかもしれない。
東京都の休業要請よりも早い4月1日から休業を続ける東京・新橋の九州郷土料理店「有薫酒蔵」の女将の松永洋子さんも、不安を隠さない。店には出身校への思いの詰まった全国3200冊余りのノートが置いてあり、ノートを広げながら客同士で話に花を咲かせてもらうことが売りの一つだ。
「当店のよさは密閉・密集・密接の『3密』が前提です。営業の再開後は、感染者を出さないことが一番大事になりますから、今までどおりの営業スタイルを続けられるか心配です」
(本誌・池田正史、浅井秀樹、西岡千史)
※週刊朝日 2020年6月5日号より抜粋
㊟超大型,超凶暴台風上陸と並行して倒産ラッシュを迎えそうだ。どうしましょう?
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