中国が封印の中身
日本人は危険、一刻も早く帰国を。
JBプレス 近藤 大介
2020/05/27 08:00
いまからちょうど1カ月前の4月26日、中国で衝撃的な経済レポートが発表された。
新型コロナウイルスの影響で、すでに中国国内の失業者は7000万人を超え、失業率は20.5%に上っているというのだ。中国国家統計局が5月15日に発表した4月の都市部の調査失業率は6.0%で、31大都市に限れば5.8%なので、公式発表とは3倍以上の乖離があることになる。
経済レポートの出所は、中泰証券研究所。中泰証券は、山東省済南市に本社を置く、中国10大証券会社の一角である。2001年5月に、山東省の9社の投資信託会社に所属する24の証券営業部が独立して、斎魯証券を設立。2015年7月に、中泰証券と社名変更した。
4月29日に発表した「2019年財務報告」を見ると、昨年の売上高は約97億元(約1500億円)、純利益は約23億元(約350億円)に上っている。子会社も含めた社員数は7718人を数え、中国国内284カ所に支店を持つ。今年は株式上場を目指している。
中泰証券研究所は、上海のウォールストリートこと陸家嘴(ルージアズイ)の東亜銀行金融ビル18階に瀟洒なオフィスを構え、152人のエコノミストらを抱えている。2016年12月には、中国で最も著名な証券アナリストの一人である李訊雷(Li Xunlei)氏を所長に迎えたことで話題を呼んだ。
そんな由緒ある大手シンクタンクが発表したにもかかわらず、この経済レポートは発表後すぐに、当局からの圧力で、お蔵入りにされてしまった。つまり、そんなレポートなどもともと存在しなかったことになったのだ。さらに李訊雷所長は、名前にある雷のごとく電光石火で、クビになってしまった。
「幻のレポート」入手
私はこの「幻のレポート」を、1カ月かかけてようやく陸家嘴の関係者から入手した。全文は概要と4章立てになっているが、たしかに内容は衝撃的だ。以下、章ごとにその要旨を訳出してみる。まずは第1章「公布された失業率と経済現状の明らかな乖離」である。
<理論上、失業率と経済周期は、密接な相反関係にあるはずである。経済周期が上向けば、生産の拡張スピードが上がり、就業機会が増え、失業率は減少する。経済周期が下降し、生産活動が緩慢になれば、就業の機会は減少し、失業は自ずと増加する。そのため欧米では、失業率と経済周期は明らかな相関関係にあり、かつ労働市場の剛性によって、失業率の変動は経済周期よりも遅れてやってくるのが常である。
中国の就業統計には二つの方法がある。一つは、企業の都市部での単位就業人数の統計だ。非民営企業が報告してくる就業状況と、抽出された民営企業と経営者の調査報告に基づいて、都市部の登記失業率を予測算出していく。
もう一つは、都市部の市民の家庭就業状況の統計で、いくつかの家庭やその成員を抽出して調査し、調査失業率を出していく。
実際の状況を見ると、中国の二つの失業率の指標と経済周期との相関性は高くない。過去20年、経済周期がどう変化しようと、中国の都市部の登記失業率は、まず大幅に上がり、後に小幅に下がっていった。経済周期との特別緊密な相関関係は見られなかったのだ。
(米中貿易摩擦で中国経済が悪化した)2018年からの都市部の調査失業率の波動は非常に小さく、基本的に5.0%前後の狭い範囲を上下したのだ。中国の就業状況は総体的に独立しているかのようで、経済悪化の影響を受けたのかは不明瞭である。
例えば、中国の3月の都市部の調査失業率は5.9%で、昨年12月に較べて0.7%上がっただけだ。だがこの間、中国の他の経済指標は大幅に下落している。
第1四半期のGDPの成長率は昨年同期と比べると、13ポイントも落ちたのだ。社会消費品の小売総額は27ポイント落ち、固定資産投資は22ポイント、輸出は15ポイント落ちた。失業率の指標は、その他の経済指標とは、明確な乖離がある>
少し引用が長くなったが、要は、
「中国国家統計局の失業率統計は、実態を反映していない無意味な指標だ」
と看破しているのである。
失業統計から漏れる失業者
第2章では、そのことに言及している。
<国家統計局が公表したデータによれば、2018年の中国の農民工(農業以外で就業する元農民)は2.9億人、そのうち都市部に出稼ぎに来ている農民工が1.35億人いる。
さらに、純粋に農業に従事している農民は2億人前後いる。都市部に出稼ぎに来ている農民工と、農村に残っている農民を合わせると3.35億人で、これは全国の就業人数の40%以上にあたる。もしこれらの人々が失業統計に入っていないのなら、調査失業率の統計には欠陥がある。
例えば、国家統計局が公布したデータによれば、今年第1四半期の農民工の出稼ぎ人口は1.2億人で、昨年同期比で5000万人以上、減っている。その中で一部は都市部で仕事を見つけられず、農村に「帰郷させられて」いる。彼らはおそらく、何の失業統計にも組み込まれていないのだ。そのため、わが国の二つの失業率の統計方法はいずれも、ものすごく大きな改善の余地があるということだ>
最後の一文は、国家統計局(中国政府)に対するイヤミだ。
試算を積み重ねると失業者は7000万人に
そして第3章では、「国際的に通用する失業率では、もしかしたら20%付近」と題して、以下のように分析している。
<同じく国家統計局のデータによれば、2018年の年末時点で全国に7.8億人の就業者がいる。内訳は、第一次産業(農林水産業)2億人、第二次産業(製造業)2.1億人、第三次産業(サービス業)3.6億人である。第二次、第三次産業従事者5.7億人中、個人経営者が約1.5億人で、その他が会社員だ。
また、個人経営者1.5億人中、1.2億人が第三次産業に集中しており、第三次産業従事者の37%を占める。これは第二次産業の13%よりはるかに高い。
こうした中、第1四半期の社会消費品小売総額のうち、飲食収入は43%落ちた。いまでも回復率は6割程度なので、仮に個人経営者の30%が復興できていないとすれば、それだけで4500万人の個人経営者が失業中ということになる。
企業の状況から就業状態を見ても、大打撃を受けている。第4次経済調査や労働統計年鑑の統計に基づけば、卸売小売、ホテルやレストラン、交通運輸などのサービス業従事者は約9300万人で、第1四半期の卸売小売の下降は17.8%、交通運輸の下降は14%、ホテルやレストランは25.3%だ。これだけを見ても、全体の15%、1400万人は失業状態にある。
また、消費に関係する製造業、例えば自動車、文化娯楽、家具などの就業人口は約1400万人で、これらの消費は第1四半期に26%低下しているので(娯楽は33%)、仮に10%が失業しているとすれば、140万人だ。
輸出が下降している製造業も見逃してはならない。中国世界バリューチェーン課題グループの試算によれば、2018年に中国からの輸出貨物100万ドルあたりの算出就業者は40人である。第1四半期の輸出は13%下降しているので、輸出関連の製造業で1000万人の失業者が出ていることになる。
こうしたことを重ね合わせると、中国の真実の失業率は20%以上に達する。失業者の増加は7000万人を超えている。これなら第1四半期に5000万人の農民工が消えた説明がつく。新たに増加した失業者が7000万人なら、対応する失業率は20.5%だ>
誠実な経済レポートが封印される不幸
この経済レポートの論点は明快で、国家統計局などの公開されたデータに基づいて、偏見なく淡々と予測している。さらに第4章では、「掛け算と連鎖反応により、必然的なV字回復はない」と題して、厳しい先行き見通しを分析している。
<国民の収入が減少し、失業が増加すると、まずは消費に影響が出る。第1四半期の国民の名目収入は0.8%上がったことになっているが、消費支出は8.2%も下がっている。これらの消費減少が意味するのは、これらの産業に従事する人々の利益が落ち、収入が落ちるということだ。よって失業者増加の影響は、掛け算的、連鎖反応的に増していくのだ。
収入の下落は、おそらく後からやって来る。第1四半期の国民収入の中で、経営収入は7.4%の下降で、給与収入は1.2%の増加だ。これを各省で詳しく見ると、経営者の収入が占める割合が大きい省ほど、国民収入の落ち込みが大きくなっている。
また、国民の今後の収入見通しが悲観的なため、最新の全国30大都市の不動産購買面積は往年の8割程度しか回復していない。
3月の100都市不動産価格は、下落する都市がさらに増えた。特に上海は前期比5.9%減で、丹東8.6%減、福州7.2%減に次いで下落幅が大きかった。二線級都市でも50%近くが前期比で下げており、中国人の財産の6割、7割が不動産関連に置かれていることを思えば、不動産下落の消費に対する影響は無視できない。
このように、中国経済回復の速度は十分すぎるほどの忍耐が必要なのだ。経済活動を「一時ストップ」することは容易だが、そこから「再開」して正常な回復に向かうには、非常に長い時間を要するのだ。経済が脆弱な期間の収入減少、企業破産、失業増加などの諸問題は、すべて掛け算式に起こるだろう。一夜にして店が閉店になっても、再び店を開けるまでには確実に多くの問題が横たわっているということだ。そもそも医学的に新型コロナウイルスが完全にどう終息するのかも不確定なのだから>
以上である。論じている内容は、いちいちしごく正論に思えるが、いまの中国では、この程度の経済レポートさえも発表が許されないのは、残念なことである。
思えば、私が北京に住んでいた10年前の8月、中国の民間シンクタンクが、
「中国ではGDPの3割が賄賂収入」という経済レポートを発表したことがあった。この時も中国全土に衝撃が走ったが、当時の胡錦濤政権の温家宝首相は、レポートをお取り潰しにするどころか、逆にそれをアピールすることで腐敗撲滅運動を始めた。「全民腐敗」という流行語は、そこから始まったのだ。
中国においては、10年経って進歩することもあれば、後退することもあるということだ。
㊟恐らく失業者は軽く1億を超える。彼らは食料を買う金もない。幼子が腹を空かせて泣いてもミルクも買えない。ここからこの国の地獄絵が始まる。隣の家の幼子を焼き殺し喰う。互いに殺し合いそれを喰う。おおおぞましきゴキブリ国よ。。。日本人は一刻も早く帰国を。
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