国民皆保険、このままでは、、、
国民皆保険、このままでは、、、
破綻は本当? 医師が考えた国民皆保険制度のゆくえ
フォーブスジャパン上 昌広
2020/01/16 08:30
昨年末、我々の研究所でインターンをした高校生から、「国民皆保険制度ってどうなるのですか」と聞かれた。彼は医学部志望だが、十代の若者までが将来に不安を抱いているのには驚いた。その国民皆保険の将来について考察したい。
国民皆保険制度は日本が誇る財産だ。ところが、このまま何もしなければ、破綻するのは時間の問題だ。
日本の国民皆保険制度の特徴は、有効とされている治療は原則としてすべてカバーされていることだ。年齢や収入により、1~3割の自己負担は存在するが、高額療養費制度のため、負担には上限がある。この制度のお陰で、医者も患者も医療費のことをあまり気にせず「ベストの医療」を追求できてきたのだ。
私は血液内科を専門としてきたが、知人のアメリカ人医師は
「お金のことを考えず、治癒の可能性が低い患者にも骨髄移植を提供できるのは、日本くらいだ。日本の医療は素晴らしい」
と言う。
米国を除く世界の先進国のほとんどは、国民皆保険制度を有している。ところが、日本のような運用をしている国は珍しい。この状況を、知人の厚労官僚は
「受給者は受けたいだけ医療を受けられ、医療サービス提供者へも出来高払い。全員で保険料・税金と国の財源に群がっている」
と分析する。
なぜ、こんなことが可能だったのかと言えば、それは、かつて日本が若くて、豊かな国だったからだ。
いまの日本は世界最高の高齢化率
日本で国民皆保険制度が実現したのは、1961年だ。当時の高齢化率(65歳以上の人口の割合を示す高齢化率)は5.8%だった。国民皆保険制度は、高齢世代の医療費を現役世代が負担する賦課方式だ。当時は現役世代17人で1人の高齢者の医療費を負担していた。これなら大きな負担にはならない。
また、この制度が議論されていた1950年代に問題となっていたのは、結核などの感染症だ。
いまとなっては想像もつかないが、1950年までは死因のトップは結核だった。周囲に拡散させないためにも、皆でお金を出し合い、入院してもらって治療するという制度は合理的だった。
ところが、2018年の高齢化率は28.1%で世界最高だ。2035年には35%を超えると予想されている。本来、保険システムの維持は給付とバランスで決まる。社会が高齢化すれば医療需要は増す。給付レベルを下げるか、負担を増やすしかない。
日本では、このことがずっと議論されずにきた。医療費が足りなくなると、税金で補填してきたからだ。現在、医療費負担に占める保険料は約5割で、3割以上が公費、つまり税金だ。
税金が足りなくなれば、政府は赤字国債を出してきた。ただ、これも限界だ。国民皆保険制度を守りたければ、給付を抑制し、負担をあげるしかない。
もちろん、政府も対応に余念がない。ただ、いずれも上手くいっていない。給付抑制については別の機会に説明するとして、ここでは負担増、つまり医療財源の確保について述べたい。
私見だが、このまま高齢化社会で医療費の財源を確保しようとすれば、現実的には消費税を上げることしかないだろう。医療機関を受診した際の自己負担額を上げれば、何のための医療保険かわからなくなるし、所得税を上げても現役世代の負担が増えるだけだ。グローバル化が進む昨今、法人税をあげることも政治コストが高い。
社会保障が充実している欧州諸国は消費税が高いのが特徴だ。ところが、日本で消費税を上げるのは容易ではない。我々と共同研究を進めている佐藤慎一氏は「日本で消費税を欧州なみに上げるのは難しい」と言う。
日本人は政府を信用していない?
佐藤氏は元財務官僚。主税局出身で、2016年~17年まで財務事務次官を務めた人物だ。佐藤氏が、このように言うのは、景気が腰折れするとか、経済界が反対するなどの理由ではない。
彼は「日本人は政府を信用していないからだ」という。そして、政府が信頼されない理由を「かつて国は無謀な戦争をして、民族滅亡の淵にまで追い込んだから」と説明する。
佐藤氏は、この国への不信感を解決するには「時間が経過するのを待つしかない」という。
また、佐藤氏が強調するのは「戦後の日本政府は本格的な増税を一度もしていない」ことだ。
「昭和21年11月には1回限りだが、最高税率90%の財産税を科し、旧華族など富裕層から資産を没収する一方、一般国民に対しては、減税と社会保障費の大盤振る舞いを続けてきた」
そうだ。これは国家が犯した犯罪である戦争の罪滅ぼしと言えるだ。
このような現象は日本に限った話ではない。「ゆりかごから墓場まで」と言われる英国の社会保障制度は、第二次世界大戦後に英国の労働党が提唱したものだ。この制度に基づき、国民全員が無料で医療サービスを受けられる国民保険サービス(NHS)と国民全員が加入する国民保険(NIS)が立ち上がった。
ただ、この政策が膨大な財政支出をもたらし、「英国病」と揶揄される状況を招いた。1980年代保守党のマーガレット・サッチャーが「小さな政府」を目指し方向転換することになる。日本は英国の社会保障制度を真似したと言われているが、このような制度が受けいれられた背景には、戦争への反省が共通していたのではなかろうか。
国民の政府に対する信頼度を評価する指標はいくつかある。佐藤氏は「税は国民の政府への信頼感の強力なバロメーター」と考えている。特に買い物の度に支払い額がわかる消費税は、その傾向が強いそうだ。
消費税が高いのは、ハンガリー27%、アイスランド25.5%、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、クロアチア25%など、欧州でもとくに北欧諸国が多い。一方、低いのは前述したドイツ19%、イギリス、フランス20%、イタリア22%と、いずれも欧州の大国だ。
一般論として人間集団は規模が大きくなるほど、帰属意識を抱きにくくなる。小国の国民は、税金は国による将来世代への投資と考えやすいが、大国の国民は、税金は国による搾取と感じるのは頷ける話だ。
ところが、例外もある。例えば、バルト三国だ。国民が一体となって旧ソ連の支配を脱し、IT活用で有名なエストニアのように政府主導で発展しているイメージがある。ところが、バルト三国の消費税率は欧州諸国としては高くない。
エストニアが20%、ラトビアとリトアニアは21%と、ドイツ、イギリス、フランス並みだ。なぜ、このような差が出るのだろう。私は他民族に征服された記憶だと考える。
佐藤氏は
「税を考えることは、国家とは何かを考えること。国民が税を払うのは、国家に生命や財産を守ってもらうことを期待するからだ」
と言う。
この視点は興味深い。20世紀、欧州は英仏独伊露など大国を中心に戦争を繰り返してきた。バルト三国のように長期間にわたり他民族の支配を受けた国もある。このような国では、政府は国民の期待に応えられなかったと言っていい。
一方、消費税率の高い北欧諸国は20世紀に戦火が及ぶことは少なく、他民族に国土を蹂躙されることはあまりなかった。これらの国では、「戦争の世紀」と称される20世紀に、国家が国民の命を守ったという見方も可能だ。国民の政府に対する信頼は、国の規模だけでなく、その国の歴史が影響するのではなかろうか。
2020年代に入り、戦争を直接経験した戦前・戦中世代が鬼籍に入り始める。日本という国の来し方行く末を冷静に議論する時期が来ている。
㊟深刻ですね。。。この記事の後、二三日後に配信しますが、日本は少子高齢化が世界一と言われながら、なんと大企業のリストラが始まっているのです。しかも働き盛り世代がリストラです。
この人たちは妻や子も居て、高齢期に入る親御さんも。。。収入は派遣で月10万円そこそこ。健康保険料など払えませんよ。日本は目の前、真っ暗。。。さ、自死の準備だ。
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