安倍政権はこれでも派遣法を改悪するのか? 派遣労働で貧困にあえぐ“普通の女性たち“
リテラ / 2015年6月8日 8時0分
• 労働者派遣法
現在、安保法案に並び、大問題の法案改正審議が着々と進んでいる。それが労働者派遣法の"改悪"だ。これまで3年だった派遣労働の受け入れを事実上撤廃し、上限がなかった専門職も一般と同様の扱いにするという今回の改正は、これまで野党の反対で2度も廃案になった大問題の代物。
これを推し進める安倍首相は「働き方の選択が実現できる環境を整備する」などとまるで労働の権利やライフワークバランスを重んじるがごとくの主張をしているが、それははっきり言って欺瞞だ。
これまで本サイトでは、とくにさまざまな女性の貧困とその連鎖について取り上げてきた。生活保護、両親との不和、若きシングルマザー、ネグレクト......と、貧困は多種多様だ。貧困のために学歴もなくキャバクラや風俗業界、出会い系で生き延びる女性たち。夫からのDVで精神的に不安定になり離婚後も就業できない女性たち。知的障害があるために福祉行政にさえ繋がらず最貧困となった女性たち──。
しかし、貧困は決して"恵まれない例外的ケース"ではない。現在では学歴もあり、ごく一般的生活を営んできた女性でも貧困は目の前にある。それは "非正規雇用""派遣労働"という労働形態と大きな相関性が存在するからだ。
『女性たちの貧困 "新たな連鎖"の衝撃』(NHK「女性の貧困」取材班/幻冬舎)ではシングルマザーや恵まれない家庭環境で育った女性たちの貧困も取り上げられるが、しかしさらに衝撃的なのが"普通の女性たち"が直面する貧困の実態だ。
近畿地方で暮らす40代の佐々木晴美さん(仮名)のケースはその典型例だろう。国立大学を卒業し一部上場企業の正社員として就職した晴美さんは若きエリートのキャリアウーマンでもあった。英語能力も抜群でTOEICは800点台だ。その後結婚したが、夫の転勤を機に退職、2人の息子をもうけた。
しかし、幸せは長くは続かなかった。原因は夫の長年にわたるDVだ。
「出産以降、夫からの深刻モラルハラスメント(精神的DV)にさらされてきた。『養ってもらっているくせに』『お前を雇ってくれる会社なんかない』。そんな言葉を晴美さんに浴びせてきた夫は、生活費の管理も自分でやるといい張り、株への投資につぎ込んだ挙げ句、借金までする有様だった」(『女性たちの貧困 "新たな連鎖"の衝撃』より、以下同)
外面はいい夫のモラハラ。そのため晴美さんは心療内科へ通うほど追いつめられていく。そんな生活を10年近く続けたが、ついに子どもを連れ実家に逃げ帰ったという。英語が得意な晴美さんはそのスキルを活かす職場を求めたが、正社員では見つからず、派遣会社に登録し、その後3年更新の契約で貿易事務の仕事に就いた。しかしそこは不条理な世界だった。
「仕事の内容は正社員とほぼ変わらない。むしろ、入社して数年の社員よりも責任の思い仕事をまかされることさえある。残業は断れない。それでも正社員と比べると、年収は半分以下。昇給は望めず。ボーナスはもちろん交通費さえ支給されない」
たまりかねて、正社員になる道はないかと上司に聞くと、「正社員は入社試験を受けて入ってきた。(略)しばらくここで働いているから正社員になれるなんて、不公平ですよ」と信じがたい言葉を投げつけられたという。その後、別の貿易事務の仕事に就いたが、ここも3カ月ごとの契約だった。
「ほかに選択肢もないし、自分よりしんどい人と比べて気持ちを落ち着かせるしかないんです。その先に何か希望があれば、つらくても頑張っていけるんですけど。どんなに理不尽な条件でも、生きるためには黙って受け入れるしかない。この国は結局、そういう我慢強い女性たちが支えているんですよ」
これが貧困のひとつの実態だ。高学歴で一部上場企業就職というキャリアがある女性でも、ひとたびレールから外れれば貧困はすぐそこだ。晴子さんにしても決して好んで派遣という業態についているのではない。仕方なく、そこに甘んじるしか仕事が、生活する手段がないのだ。
もう1人、4年制大学を卒業した24歳の愛さん(仮名)も正社員を希望しながら派遣社員とした働く女性だ。幼いころに両親は離婚したが、近くに祖父母も健在で、貧しいながらも母子仲睦まじく、高校の成績も優秀だった。
大学へは学校の奨学金と社会福祉協議会の教育支援を借りて進学した。バイトをしながらも、勉学にも励んだという愛さん。しかし、卒業後は正社員を希望するもリーマンショック後の不景気もあり叶わず、東京の観光名所のインフォメーション業務の派遣社員となる。
やりがいはあった。でも、収入は手取りで月14万円。しかも2年間正社員と同様に働いたにもかかわらず、昇給はたった1円、ボーナスも≪ここからブロマガ≫『課金記事』を購読するをクリックしてください≫